豊田工業高等専門学校 電気・電子システム工学科
 固体エレクトロニクス研究室 及川グループ

 豊田工業高等専門学校 電気・電子システム工学科 固体エレクトロニクス研究室 及川グループ

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豊田高専及川研究室

超伝導現象

(※平易な解説を心掛けたため正確性に欠ける部分があるかもしれませんが, ご了承ください。)

 一般的に物質を冷却していくと, 超伝導状態に変化(相転移)します。例外はありますが, ほとんどの物質は超伝導状態になると言っても過言ではありません。超伝導体特有の現象には大きく次の4つが挙げられます。

  1. ゼロ抵抗(完全導電性)
    これが最も有名でしょうか。通常の常伝導体では, 電子が運動するときに正イオンによって乱されます。これが電気抵抗に相当します。超伝導体中では電子2つが結合し電子対(クーパー対)という新しい粒子として振る舞うことによって, 正イオンの影響を受けず, 電気抵抗がゼロになります。この性質を使うことで, 無損失の送電ケーブルや強力な電磁石に応用できます。
  2. マイスナー効果(完全反磁性)
    2つの磁石のS極とS極(またはN極とN極)が反発する性質を使って磁石を安定して浮上させることができるでしょうか?そう簡単にはいきません。超伝導体は磁束を内部から完全に排除する性質(完全反磁性)があるため, 磁石のS, Nどちらの極でも超伝導体と反発します。これによって安定して浮上が可能となります。これがマイスナー効果で, ゼロ抵抗の性質からは説明できない超伝導特有の現象の一つです。

    マイスナー効果
  3. 磁束の量子化
    超伝導体でできたリングの中に磁束を入れようとすると, 決まった磁束(磁束量子)の整数倍の磁束しかリング内にはいることができません。このように磁束が離散的に振る舞う現象を磁束の量子化と呼びます。これは超伝導リングが超伝導状態を保つためにリングに電流を流し, 内部の磁束を自ら調整することによって生じる現象です。磁束量子は質量のない粒子と見なすこともでき, 非常に高速に動作可能なためコンピュータ素子などに応用可能です。

    磁束の量子化
     
  4. ジョセフソン効果
    超伝導体で絶縁体をサンドイッチした構造を考えてみてください。通常は絶縁体が間にあるため電流は流れることができませんが, 絶縁体が薄い場合は電子が絶縁体を通り抜けるトンネル効果によって超伝導トンネル電流が流れます。これがジョセフソン効果であり, この効果を示す構造をジョセフソン接合と呼んでいます。ジョセフソン接合は物質のミクロな範囲で生じる量子現象と我々の住むマクロな世界の架け橋であり, この量子現象によって超高性能なデバイスの候補として大きく期待されています。

    ジョセフソン効果
    超伝導体にも色々な種類がありますが, 我々は比較的高温で超伝導状態になるBi2Sr2CaCu2Oy(通称Bi-2212)に注目しています。Bi-2212の結晶構造自身がジョセフソン接合を原子スケールで形成しており, 1 cmの立方体に600万個以上のジョセフソン接合がパックされています。これを固有ジョセフソン接合と呼び, 我々は固有ジョセフソン接合を含むBi-2212単結晶をデバイス状に加工することによって次世代の新領域デバイス開発を行うべく, 研究を進めています。