- もともとTUM(Technische Universitaet Muenchen:ミュンヘン工科大学)はミュンヘン市中心部にあった。今でも一部の学部は市内中心部にある。Garchingは田舎であるが、大学のある町ということもあり、人の出入りはけっこう多い。大学はまだ新しく、私のいたWalter Schottky研究所も10年前にできた建物で、研究設備は充実していた。ショットキーダイオードなどのデバイス名でも知られるShottkyという名前は半導体を勉強したことがある人なら誰でも知っているドイツ人の偉大な物理学者の一人である。その名前を冠した研究所は窒化物半導体やシリコンなどについて理論的および実験的に4名の教授が協力して研究を行っていることで有名である。同じ大学内にはこれも有名なMax Planckというドイツ人物理学者の名前を冠したMax Planck研究所もあった。Max Planck研究所はドイツ全土にいろいろな分野の研究所をもっているが、ミュンヘンは特に宇宙物理学の分野で有名である。恵まれた環境と天文台を持つということで世界最高の研究環境が整っているとされる。
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ドイツの学校は公立ならば、基本的に授業料「無料」である。大学でさえもそうである。試験は結構厳しいようだ。小中学校でも留年する生徒がいるようだ。能力が基準に達しなければ上に上がれないというルールは小さいときから教え込まれているので、こちらが想像するような劣等感などは持たないのかもしれない。ドイツでは早い段階で普通高校へ行く者と職業訓練学校に行く者とに分かれる。机上の勉強の出来が悪くても、技術を身につけることで社会がきちんと役割を与えるシステムになっている。これもドイツの社会システムの良いところの一つである。大学では能力がないとみなされれば転学や進路変更のアドバイスなどがある。
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しかし、恵まれた環境の中でも学生らの不満はいろいろとある。まず、クーラーがないことである。ドイツでも真夏となると研究室の温度は30℃以上にもなる。鉄骨と採光のよいガラスが多用された4階建ての我々の研究所は、最上階のゲストルームが特に暑くなるらしい。私のいた3階でもみな「暑い暑い!」と言って炭酸入りのジュースやコーラをがぶがぶ飲んでいた。ドイツのミネラルウォータは炭酸入りのものが多いが、その需要が理解できる。湿気の少ないからっと気候に、炭酸の口当たりとのどごしがとても合う。今では私も「mitkohrensaere(炭酸)」と書かれたミネラルウォーターの方が好きになった。
湿度が低いので暑いと言っても木陰に入ればすぅっと汗が引き、湿気が少ないことを実感できる。日差しは射すようなまぶしさがあり、サングラスの重要性はグランドでサッカーするときにも実感した。
ちなみにドイツの一般家庭でクーラーのある家はほとんどない。特に必要がないからである。フラットの1階にある我々の家にももちろんクーラーはないが、断熱構造はしっかりしているのでその必要はまったく感じなかった。従来、車にもほとんどついていなかったが、最近はクーラー付きの車が増えているそうだ。ドイツでも地球温暖化による影響では?と身近に感じることがあるようだ。
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大学での生活は快適であったが、学生食堂の食事がおいしくないことも残念なことの一つであった。たまに食べたパスタのソースはまあまあのおいしさだったが、ゆですぎで麺がぶちぶちに切れる。また量が半端じゃないのでとても食べきれない。だいたい5〜6DM(約300円)くらいで食べれるが、もう少し値段を高くしてもいいから何とかしてくださいな。近くのMax
Planck施設内のレストランは外来研究者が多いせいか、値段は少し高めだがおいしい料理を食べることができた。
2002年に新しくできる情報工学科のために近代的な建物がほぼ完成していたが、学食は増築されないらしい。今もお昼どきは大変込み合っているのに、「もっと込むようならもう行かない」と同僚のスペイン人助手とブラジル人院生は怒っていた。